ひとと趣味とまち

今回の参加者

  • 阿南勝啓

    「新大分土地株式会社」代表取締役社長。映画や音楽、雑誌などのカルチャーを愛し、特に60年代前後のロックンロールやアメリカンポップス、シティポップ、昭和の歌謡曲には目がない。レコード愛の原点は、加山雄三の「エレキの若大将」。主題歌「君といつまでも」と「夜空の星」のEP版を購入し、何回もリピートして聴いた。

  • 望月孝治

    大分市出身で、大学進学を機に上京し、卒業後は東京でレコードショップ店員として働き、レコード業界歴は25年以上。2020年4月に大分へ戻り、「Bathing records」をオープン。好きな音楽はジャンル問わず全般で、最近の好物はAOR。

  • 小森俊平

    Contのデザイナー。趣味は和モノ、ブラジル音楽、CMソングなどのレコード収集という音楽好きのロン毛。村井邦彦や山下達郎、細野晴臣、三木鶏郎などの作品を愛する。先日、大貫妙子のライブを大阪まで見に行き、変わらない透きとおった歌声に魅了されたばかり。

三者三様のレコードとの出会い

僕はギリギリ昭和生まれで当時はもうカセットテープ、CDが主流でした。なので、レコードは当然後追いで。阿南さんは、リアルタイムでレコードを聴かれていたんですよね。羨ましいです。

当時はまだカセットテープがなかったもんね。

CDがメジャーになってからもずっとレコードを聴いてたんですか?

レコードプレイヤーがなくなっていったので、徐々にCDを聴くようになったよ。でも知人からまだプレイヤーが手に入ると聞いて、またレコードを集めてみようかなって。CDを持っていたけど、また同じ曲のレコードを買い直すことも多かったね。引っ越すたびにカミさんに「このレコード全部持っていくの!?」って怒られたこともあった(笑)

望月さんはどうですか?

レコードを聴いてたのは小学生のときかな。よくレンタルレコードを借りてましたね。80年代はデュラン・デュランやカルチャークラブが好きでした。レコードからCDへの転換は高校生くらいだったかな。そこからレコードに戻ってきたのは、渋谷系サウンドが花開いたとき。レアグルーヴの文化がドーンと盛り上がって。ブート、レアグルーヴの定番みたいな曲がたくさん発売されるようになって、めちゃくちゃレコードを買いました。そのタイミングからみんなレコードに回帰し始めたんですよ。

そして、今またレコードが売れているとニュースで耳にしました。まだまだ根強い人気ですよね。

そうですね。やっぱりリスニングとしてのレコード文化が復活したのが大きいかな。90年代はDJカルチャーありきだったけれど、今は、レコードでDJっていう文化は逆に少なくなって、買って家で聴くパターンが多いかもね。小森さんがレコードにハマったきっかけは?

好きな音楽のルーツをたどっていったら、はっぴいえんどやシュガーベイブに出会い、細野晴臣さんにハマって、ティン・パン・アレーのメンバーが参加している作品を聴くようになって。それが二十歳くらいですかね。当時はCDで聴いていたんですけど、そこそこ値が張るレアなCDが、レコードだとワンコインで買えたりして、聴くだけだったらレコードのほうが安く済むなって思って。不純な動機なんですけど。でも当時からレコードのサイズ感とかジャケットがすごく好きで、部屋に飾ってました。

サイズ感や、紙のジャケット、レコードそのもののモノとして魅力ね、わかるわかる。仕事柄、多くの人から「レコードの魅力は何ですか?」って聞かれるんですけど、最近は「集める楽しさ」って答えてます。フェティッシュな喜びを得られるのは大きいなと思って。ポケモンと同じなんですよ。いかに多く集めてみんなに自慢できるかっていうのがポイントですよね。

「これ持ってんだぞ」って自慢できますよね。

そうそう。やっぱり集める楽しさが一番大きいね。買って聴いていないレコードとかもある(笑)。

3人が選ぶ昭和歌謡の変な曲

ここからは「昭和歌謡のお気に入りの変な曲」をテーマにお話したいと思っています。早速お披露目会に移りましょう。

昭和のカルト歌謡3選ね。楽しみ。

では私から。1曲目は水原弘の「へんな女」です。ご存じですか? 

聴いたことあるぐらいかなぁ。

水原弘も元々はロカビリーシンガーだったよね?確か「黒い花びら」でレコード大賞を受賞したんだっけ?

「ウパウパティンティン」って歌詞カードにも載ってますからね(笑)。

うちで流すとソフトロック歌謡になるね(笑)

素晴らしい。じゃあ次は私が。トニー谷さんの「ジス・イズ・ミスター・トニー谷」。

ああ、このジャケット見たことあります!

トニー谷さんが亡くなったあとに出たアルバムで、大瀧詠一さんが監修している作品。この中の1曲目「さいざんす・マンボ」もいい曲だけど、僕のイチオシは「あんたのおなまえ何ァんてェの」。拍子木を楽器として使いながら歌うんですよ。

初めて聴きます。楽しみ!

素晴らしい。当時の小学生はみんな真似してたよね。

ちなみに、「おそ松くん」のイヤミはこの人がモデルだって赤塚不二夫が番組で言ってたらしい(諸説あり)。「そうザンス」とか言葉遣いが似てるよね。

では、私はこれを。安藤昇の「男が死んでいく時に」。

うわ、すごい!安藤組やろ?

そうそう、安藤昇って元ヤ●ザなんですよ。安藤組が解散したあとは俳優や歌手もやってたんです。

脇役から主役まで、映画にけっこう出てますよね。

今じゃあり得ないですよね。

これは阿久悠作詞の曲なんだけど、内容が強烈で。ヤ●ザが死んでいくときの最後の言葉をイメージして作っているんです。面白いからぜひ聴いてみてほしい。

「あんた俺のなんなんだ!?」って(笑)歌詞っていうかセリフですね。

ハハハ!!(爆笑)河野さん(Cont代表)もこういうの好きそうだね。

さすが阿久悠の作詞だよね。安藤昇は経歴含めてホントに面白いんですよ!

最後のエコーがたまらないね!

昭和時代は、悪いものにあこがれる文化みたいなのがありましたよね。中でも安藤昇はスターだった。顔もファッションもかっこよかったしね。

みなさんさすがの選曲でした。私も2曲目は語りっぽい感じのセレクトになりました。「愛川欽也の一所懸命」から「幸せはパリで」です。

キンキン!こりゃまたすごいね。

バート・バカラックが作曲した映画「幸せはパリで」のテーマをバックに、キンキンの台詞が乗るという…。本当に偶然ですが、バカラックが亡くなったというニュースが今朝入ってきて、すごい角度からの追悼になってしまいました。

「とん平のヘイ・ユウ・ブルース」につながる、ラウンジ感とお笑い、ところどころに下ネタが入っている(笑)

ちょっと哀愁を感じさせる雰囲気もあり。

2曲目悩むな~。ザ・ピーナッツの「Golden Town」にします!ドイツで発売されたドイツ人作曲の楽曲です。当時ワタナベプロダクションがドイツに進出したタイミングだったかな。だけどピーナッツのムード歌謡らしさは全然ない。ロシア民謡とか行進曲みたいなイメージの曲だね。

おしゃれ。ソフトロックな感じですね。ジャケットも素敵です。日本語の歌詞バージョンはないんですか?

いい曲なんだけど、日本では発売されてないみたい。

では、私の2曲目ですね。香山リカさんの「お医者さんブギ」を。所謂ちびっこ歌謡ですね。結構面白いのでぜひ。

若干お色気要素があるんですね。

やっぱりエロが大切なんじゃないですかね。

コーラスが癖になりますね。

フィンガー5みたいな感じ。

このジャケット、普通だったら2人の医者は違うイラストにすると思うんですけど、同じ医者をコピーしておいてますね。そこがまたいいなぁ。

安いデザインですね(笑)

では、早くもラストのターンになってしまいました。最後はルートNo.1の「大学ノート・サンバ」を。作詞は山上路夫、作曲はすぎやまこういちという作品です。

いいですね。昔の歌謡曲って基本はラテン~ブラジルの音楽の影響が大きい。

そして歌詞に注目してください。すべて大学の名前なんですよ。要は「自動車ショー歌」の大学版です。

なるほど、ダブルミーニングでしゃれてるね。

よく見つけたね~、さすがだな。それじゃ僕のラストは、大好きな植木等さんの楽曲で、テレビドラマ「おれの番だ!」の主題歌。ハナ肇さんと植木等さん、谷啓さん、クレイジーキャッツの3人、藤田まことさんが、2ヶ月周期で主役を務めるドラマ。レコード化はされていなくて、ロート製薬提供のソノシートです。

曲名も「おれの番だ!」ですね。

そうそう。主題歌もドラマと同じタイトル。この曲の面白いところは、毎回ドラマの主役の人が、メインボーカルとして歌って、その他の人がコーラスを務める。4人とも歌い方やアレンジが違うから聴いてみて。

なるほど。メインが変わって4回続くわけですね。

そうそう。

素晴らしい(拍手)。

では、私の最後の1曲ですね。羽賀研二の「ネバーエンディング・ストーリー」。特筆すべきは、「歌詞がすごい(笑)」。

聞いたことあるかもしれません。

気づきましたか?歌詞が全く映画に関係ないんです(笑)。当時は権利関係とかめちゃくちゃだったので、皆がおおらかにこういうカバーを出していた気がしますよね。

許可は取っているんですかね?

ちゃんと許可は取っているとは思います。当時は映画が文化の中心だったので、こういった映画のカヴァー曲が頻繁に発売されていたんです。めちゃくちゃだけど面白い時代でした。

羽賀研二の人柄もあるのか、すごく軽薄な感じが(笑)

バブルを駆け抜けてきた男感がすごい。

狙って出せるようなものじゃないよね。

いやぁ、他に類を見ない、究極のプレイリストができましたね。

サブスクの音楽配信サービスでは絶対聴けないね。

今日ピックアップしたような曲をカラオケで歌ったりすると、マニアックすぎるからみんな知らないし、拍手もない(笑)。

やっぱ歌っちゃいますよね。

何か歌えよって言われたから歌ったのに!みたいな。

「え?終わったの?」とか言われたり(笑)。

でも中には阿南さんの歌声からそのアーティストのファンになる人もいるかもしれないし。

あんまりおらんなあ。植木等さんでも「スーダラ節」とか「はいそれまでよ」とかメジャーなのは歌わないし、だれも聴いてないっていう。

ハハハハ!

今日は昭和歌謡にどっぷり浸かる楽しいひとときでした。本当にありがとうございました。また是非!

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●ハンググル マニ サランへ!(韓国だいすき!)
●Ciao! Italia
●あの街の、あの本屋さんが好き。

今回のお店

Bathing records

大分県大分市中央町4-1-21 OTSビル中央町 3F
☎ 097-537-7716
営業時間:12:00〜20:00
定休日:月曜日
P なし

https://bathingrecords.com/

大分駅から徒歩10分、中央町のオアシス並木通り商店街にて2020年にオープン。ロックからJポップ、R&B、ヒップホップ、クラブミュージック、ワールドミュージック、サウンドトラックまで、全ての方にご利用いただける敷居が低く間口の広いレコード屋。店名の「ベイシング」は、音楽に浸かる(Bathing)から。買取りもオールジャンルOK。お気軽にご利用ください。

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