ひとと趣味とまち

今回の参加者

  • 後藤邦孝さん

    1986年大分市生まれ。吉祥寺のブックカフェ「ブックス・ルーエ」の勤務経験から本屋のオープンを決意。スペインを巡ったあと大分県へ戻る。書店やパン屋で働いたのち、2021年7月に「Bareishoten」をオープン。

  • 工藤真由

    大分県大分市育ち。2022年春よりデザイナーとしてContへ。本や本屋さんが好き。小説、エッセイ、詩集、写真集など様々なジャンルの本を読むので最近は本棚にスペースがなくなってきたのが悩みの種。

本好きの人もそうじゃない人も
気軽に楽しむブックカフェを

ここ数年、大分にも少しずつ街の小さな本屋さんや、ブックカフェが増えてきましたよね。後藤さんが本の販売だけでなく、イートインできるブックカフェのスタイルを選んだのはなぜですか?

やはり、通販やWEBもあるし、本屋だけでは厳しいと思って。何か付加価値が必要だなと。オープン前、スペインに1ヶ月行ったんです。スペインのバルの文化に触れて、「そうだ、これだ!」って。本好きのための空間にしたいけれど、本が好きでない人もカフェやバルとして楽しんでほしい。誰もがほっとひと息つけるような場所、誰であっても許容できる本屋でありたいと思って。本に興味がなかった人が本を好きになってもらえたらラッキーかな。これがこのお店のコンセプトです。本に対して崇高な思想もなくて…すみません。

いやいや、むしろそういうフラットな感じが私は好きで。好みや理想を押しつけるのではなく、お客さんが好きなものを好きなときに選ぶ、そんな感じが心地よいです。いつも気軽に利用させてもらっています。

嬉しいな、ありがとうございます。

仕事が忙しいとなかなか本を開けないこともあって、それが自分の精神状態のバロメーター。ここで本を選びながら、本のことだけ考える時間が何より幸せです。忙しくなってきたときの、心をリセットする場所でもあります。

バレイショテンInstagramより

本屋巡りが好きな2人の
BEST本屋は?

私は昔から本が大好きで、東京や京都に住んでいた頃は“店主の本への愛”が垣間見える小さな街の本屋を巡っていました。だから、大分にもBareishotenさんみたいな本屋ができたことが嬉しくて嬉しくて…。後藤さんも昔から本や本屋が好きだったんですか? 

本は昔から好きでしたよ。大学卒業後、インテリア系への就職を目指し、カフェでアルバイトをしていたんだけど、お店が閉店することになって。いよいよ来月の家賃も払えなくなりそうだったので、吉祥寺の古本屋「ブックスルーエ」に、「3日だけ働かせてもらえませんか!?」ってお願いしたんです。それが僕と本屋の出会い。まさか自分も本屋を生業にすることになるなんて、当時は想像もできないですよね。

本屋を始めるきっかけが意外です(笑)。てっきり「小さな頃から本屋が大好きで~」的な理由だと思っていました。私は、東京荻窪の「Title」や、渋谷の「SHIBUYA PUBLISHING BOOKSELLERS」が好きで何度も訪れていました。どちらの書店も、たくさんの知らない作家や見たことのない本、新しい考え方に出会えました。後藤さんも書店を巡ることは多いのですか

さすが、本屋に詳しいですね。そういえば、先日も京都にある書店「恵文社」の話をしましたね。工藤さんみたいな本好きの人に出会うと、お店をオープンさせてよかったなと思います。 東京や京都、全国各地の本屋を周りましたし、九州1周本屋巡りの旅もしましたよ!本ももちろん好きですけど、街の本屋が大好きで。東京文京区にある「往来堂書店」さんは、街の本屋特有の、気軽に立ち寄りやすくてやわらかな雰囲気がすごくよかったです。あと佐伯にある「根木青紅堂」も大好きです。 

「根木青紅堂」…名前は聞いたことがあります。具体的にどういったところが好きなんですか?

日本全国回りましたが、佐伯の「根木青紅堂」はコンセプトや選書含めて、私の理想の本屋ですね。お店の雰囲気も心地よいし…大分にあんな本屋があることが素晴らしい。大分の誇りと言っても過言ではないですね!

あえておすすめしないから
本で会話する楽しさが生まれる

街の本屋さんといえば、“本好きの店主厳選の作品”が並ぶイメージですが、ここは、POPもないし、「お好きな本をどうぞ」というスタンスですよね。後藤さんの選書の基準が気になります。

実は…選書への強いこだわりはそれほどないんです。オープン当初は、書店員時代の経験や知識を生かして仕入れていましたが、段々枯渇してしまうんですよ。今は、お客さんのニーズや好みも少しずつ分かってきたので、その中から「仕入れたい」と思う作品を仕入れています。

でも、お客さんから「おすすめの本は?」って言われることありません?

ありますよ~。正直困っちゃう(笑)。本ってあくまでも個人の趣味だから、押しつけられて読むものではないと思っています。こだわりを上げるとすれば、お客さんが「これ面白い!買いたい!」と思う本が1冊でも見つかるようなセレクトを意識しています。

なるほど…それにまんまとはまって、フラ~っと来店して気づいたら4~5冊抱えて帰ってます。レジで後藤さんと作品について語り合ったり。あえておすすめしないから、逆にコミュニケーションが生まれる‥それがBareishotenの魅力ですね!ここで購入した矢萩多聞作の「美しいってなんだろう?」は、日常の中の小さな物事にも美しさを見つけ出すその様子や言葉に「うん、うん」とうなずいてしまう本でした。

気に入ってもらってよかったです。あの本は……おっと!延々とお話してしまいそうです…。また次回ゆっくり語りましょう。また遊びにきてくださいね。

今日はお話しできてよかったです。ありがとうございました。

今回のお店

bareishoten

大分市金池町2−13−13 リザータ金池町102
090−9484−4542
12:00〜22:00 ※水曜は18:00〜深夜0:00
火曜定休 
P なし※店舗前の有料P利用

https://bareishoten.com/

ゴッホの「じゃがいもを食べる人々」から、日常にあるじゃがいも(=バレイショ)と本屋(=ショテン)を掛け合わせた店名。店主がセレクトした本と一緒に、カフェメニューやお酒が楽しめます。水曜日は深夜0時までオープンしていて、バーとして利用もできるまちの書店です。

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