プロローグはこちら

8ビル篇はこちら

臨戦体制が常態化し、心身ともに消耗しつつあった8ビル時代。この頃から、「室内に篭ってデザインワークをするだけではダメじゃないのか?もっと積極的に外部と関わって仕事しよう」と考えるように。名残惜しさを感じながらも新しいステージに向かうべく、府内町へ引っ越すことにした。

もともと家具雑貨店だった細長い空間を室内ドアで仕切り、自然光が差し込む前方はソファを置いて打ち合わせスペースへ。スタッフやお客さんとミーティングをしたり、ふらりと訪れた人と雑談を楽しんだり…そのスタイルは、クライアントとじっくり話して、コミュニケーションを図りながら広告を作り上げていくContのクリエイティブスタイルへと繋がっている。また、オフィス後方には、業務に集中できる作業スペースを設け、メリハリのあるオフィスが誕生した。明るく開放的な空間で、社内の空気も少しづつ変わり始めた。


ようやく軌道に乗り始めた頃、ある男を紹介され、面談することになった。肩まで伸びたロン毛に、さながら70年代フォークシンガーのような風貌で事務所を訪れ、基本的な自己紹介やこれまでの経歴を軽めに話し終えると、突如「レコード、見ても良いすか?」と立ち上がる。

そうしてキラキラした目で河野のレコード棚を漁り始めた。これが、新入社員が入る度にネタとなるKomoriの採用面接だ。河野も敷嶋も呆気にとられながらも、レコードトークで盛り上がり、そこが決め手となり無事に(?)入社することになった。


徐々に社員も増え、順調に仕事も増えてきた。それと同時に締め切りのプレッシャーも増してゆく。会社の成長にワクワクしたり、仕事を楽しむ余裕を感じるには100年早い!とばかりに、毎日が修行のような日々が続いた。当時は経理のスタッフもおらず、河野が自らが夜な夜な経理業務をしたり(しかもwordと電卓で!)、手書きで事業計画書を作ったりもしていた。

「この売上、抜けてね?」
「すみません、すぐに出します」
「早く領収書出してな」
「はい(今、夜中3時ですよ…!?)」

早く総務・経理の従業員を雇えばいいだけの話だが、そんな考えは微塵もなかったのか、相変わらずバトルを繰り広げる河野と敷嶋だった。さらに、バトルといえば…

週末、河野がレコードを爆音で聴きながら仕事をしていると、
「音楽がうるさいです。少しボリュームを下げてください」

オフィスで飲み会をしていると
「笑い声がうるさいです。勉強中です!!」

上の階で塾を営んでいる先生に、事あるごとに、我が子のように咎められ、毎回シュンとしていた。ただ、振り返ってみると、悪いのは100%私たちであることは間違いなく、この場を借りて全力で謝りたいと思います。

「すいませんっ」


失笑ネタが多い府内篇だが、実は意外と悩み多い時期だった。そんな中、広告制作のプロセスの源流部分ともいえる、“お客さんからの悩みや相談と向き合いながら、解決策をプロデュースする「BSIDE」が社内ベンチャーとして誕生した(社名&ロゴともに河野のデヴィッドボウイ愛が炸裂)。県内外の多くの人と関わる中でContの強みや魅力に改めて気づき、仕事に対するワクワク感を発見することができたと河野は振り返る。会社始まって以来のカオスティックな状況ではあったものの、今のContの礎は府内時代にあると言っても過言ではない。

2020年春、コロナ禍という予想もしなかった事態となりリモートワークを導入したり、スタッフのメンバーチェンジなどを機に、自分達の働き方のスタイルを見つめ直すようになった。「そろそろ次のフェーズに進むときなのでは?」今の自分たちに“ちょうどいい”オフィス&ワークスタイルを探して、さらなる旅は続く。

【竹西篇へつづく】