日本芸能史に燦然と輝く巨人、いや巨鶏

komori

エンターテイメントお化け

三木鶏郎(トリロー)という方をご存知でしょうか。
ラジオパーソナリティ、放送作家、演出家、
そして音楽家として膨大なコマーシャルソングをつくった伝説のクリエイターです。

自身のラジオ番組「日曜娯楽版」にて
社会、政治を風刺したコントを放送しGHQ、政府に睨まれながら
聴取率90%記録したという伝説を残しています。
番組内で流れるオシャレな「冗談音楽」を通して
戦後間もない日本に音楽で光を与え続けました。

この方はなんといってもCMソングの祖として知られています。
というのも日本初のコマーシャルソングの作詞作曲者で
その曲というのが小西六写真工業(現:コニカミノルタ)の「僕はアマチュア・カメラマン」。
カメラのCMというと今なら、誰が撮っても綺麗に撮れる的打ち出しが一般的ですが、
「♪写真が出来たら みんなピンボケだ」
「♪写真が出来たら みんな首がない」
「♪写真が出来たら みんな二重撮り」
「♪写真が出来たら みんな露出過度」
「♪写真が出来たら みんなブレている」といった歌詞で
宣伝になるのか?と思ってしまうコミカルな内容でした。
これが日本のCMソング第1号なのです。

ここからトリローの快進撃がはじまり、
「♪明るいナショナル 明るいナショナル」(松下電器)
「♪ジンジン仁丹ジンタカタッタッター」(森下仁丹)
「♪ワ・ワ・ワ ワが三つ」(ミツワ石鹸)
など一度聴いたら耳から離れない歌詞とメロディーセンスを武器に
生涯でつくったCMソングは400曲とも言われます。
最近頻繁にテレビから流れていた「キリンレモン」の歌も
60年前につくられたトリローソングです。

今ではありえませんが、
キリンの曲を書いてアサヒビールの曲も書く。
花王石鹸の曲を書いてミツワ石鹸の曲を書いて、牛乳石鹸の曲も書く。
トヨタ、日産、三菱、ダイハツ、SUBARU、いすゞの曲を書く。
といった競合他社のお仕事依頼も多々。

そんな鶏郎氏の周りにも、やはりすごい人たちが集まってきます。
彼が主宰した、今でいうクリエイター集団「冗談工房」は多くの才能を輩出していきました。
作曲家では、“手のひらを太陽に”のいずみたく、“おもちゃのチャチャチャ”の越部信義、
作家系では“上を向いて歩こう”の永六輔、直木賞作家の五木寛之、
さらには“大島渚ぶん殴り事件”の野坂昭如など、錚々たる顔ぶれ。

「鶏郎」という名前は勿論芸名ですが、
ちなみに「三木」も芸名で、由来はあのミッキーマウスから。
理由は「好きだから」。

私は三木鶏郎を通して、ウォルト・ディズニーの偉大さも感じた次第です。